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2005年9月22日 (木)

『最初の入院』② Crohn's Disease-6

検査室は異常に静かだった。

それもそのはずでその日の検査はすでに終了していて僕の検査は急遽行われたものだったからである。(ドクターから後日聞いた話ですが)

中には中年の女性のドクターと中堅どころの看護師二人が待っていた。おもむろに看護師からハーフパンツを渡されてこれに着替えてくれと言われる。それは一方が開くことのできるものであり男の習性として当然そちらが前かと思ったが「開いてるほうをおしりの方にしてはいてください。」という看護師の言葉で「あー、ここからカメラ入れるのか。」とひとり合点しふらつく体を壁で支えながらズボンを着替えた。

しばらく検査室に備えられているトイレの横で待たされてが不意に便意を催してきた。「あのー。トイレしたいんですけど。ここ使っていいんですか?」相変わらず蚊の鳴くような弱々しい声で看護師にたずねると「どうぞ。使ってください。」とこちらとは対照的な明瞭な返事が返ってくる。便座に座り軽くいきんだだけで下痢気味の便が出る。しかしそれは便ではなくはっきりと分かるほどの下血であった。すいません。また下血しました。」さっきよりいっそう弱々しくなった声でそばの看護師に声をかけると「そのままにしておいてください。先生に見てもらいますから。」という言葉が返ってきた。

しばらくするとメガネをかけた中年女性ドクターが現れる。あー。結構出てるね。」もちろんそれが便ではなく血をさしていることは言うまでもない。なぜか分からないが不意に「がんですかね。」という質問が自分の口から出てきた。しかし女性ドクターは「いや。あなたの年齢ではそれは無いと思うよ。まあ検査すれば分かるから。」と多少笑顔を携えながら明瞭な言葉をこちらに返してきた。しかし昨夜から続く下血を目の当たりにしている現実がその言葉に安心するような気持ちにはさせてくれなかった。

検査台に移されると何かの注射(確か筋肉を弛緩する注射だったと思うが)をされすぐにおしりの穴からカメラが入ってくる違和感を感じた。と言ってもそれは文字通り違和感程度のもので痛みを感じたりというものではなかった。僕の目の前には自分の大腸が映し出されているモニターがあるがそれを見る余裕などとても無かった。唐突に自分の背後にいるドクターから「奥までカメラが入ったからこれから大腸の様子見ていきますね。」と声がかけられる。はい。」と答えたような記憶があるが定かではない。すると突然腹部に痛みが走る。思わず「うっ。」と声を出すこちらに「ちょっと痛いと思うけど我慢して。」というドクターの声。しかしそれはちょっとなどというものではなくしだいに強さを増すそれに脂汗がはっきりと感じられた。こちらの苦痛などかまわず検査は続く。うっ。」「はー。」「ふー。」その姿は陣痛の始まった妊婦のようなものであったかもしれない。(僕は出産に立ち会った経験はありませんので想像ですが)

「はい。終わりました。」どれほどの時間がたったのか分からないがともかくも唸り身をよじり苦痛に耐えた時間は終わった。しかしすぐに検査台から起き上がる気力も無くしばらく放心したような状態で検査台に横たわっていた。「ゆっくりしてていいですから。」と言う看護師の言葉を背中に受けそのまま眠ってしまいたい衝動に駆られたが「いや。大丈夫です。」とほとんど無い気力を振り絞り検査台から起き上がり乗ってきた車椅子に腰を下ろす。

しばらく車椅子に腰掛けた状態で時間をすごした。その間何を考えていたかは覚えてないが多分やばい病気であることは想像ができた。その中には当然のようにがんという事も含まれていた。

「えーっと。」その言葉とともに僕の横に近づいてきたドクターの手には数枚の写真があった。たぶんクローン病だと思うよ。」何気に発せられたその病気の名前を僕はもちろん知っているわけも無い。クローン病?」こちらの訝しげな表情と言葉に「たぶんね。この病院に詳しい先生いるから後で見てもらうけどおそらくカメラで見る限りではそうやと思うよ。」という言葉が返ってきた。がんじゃないんですか。」また無意識に出てきたこちらの言葉に「それはないよ。」と決して繕った感じではない笑顔を見せ言葉を返してきた。その言葉に瞬時安堵感があったがしかしそれはクローン病という病気を詳しく知るまでのものでしかなった。

検査室から内科外来に戻ると先ほどのじいさん医師ではなくメガネをかけた中年医師が待ち構えていた。あなたを担当しますSと言います。よろしく。」言葉を返すことなく軽く会釈したこちらにかまわず「先ほどO先生からも聞いたと思うけどおそらくクローン病という病気です。」となぜか自信にあふれた様子で話をする。続けて「この病気は少し厄介な病気なんです。まあまた入院されたら詳しく説明をしますけど。」という言葉をさえぎるように「入院ですか?」と弱々しく尋ねる。今思えばあの状況で家に帰れると考えた浅はかさを恥じる気持ちがあるが何とか入院だけは避けたいという気持ちがあった事は間違いない。こちらのおろかな言葉に多少語気を強めて「もちろん入院です。しばらく食事もできませんよ。こんな状態で家に帰れないですよ。」とすこしあきれた表情も浮かべながら言葉が返ってきたのはある種必然であった。

そこから先は病気の説明、これからの治療の方針、検査の説明等があった。クローン病を専門とする(厳密には大腸全般の専門ですが)医師だけに明瞭かつ丁寧な説明があったがはっきりとこちらが理解し受け入れるには時間が短すぎた。突然聞いたことも無い病名を告げられ、人生初めての入院を余儀なくされた状況に軽くパニックになってもいた。ましてやひどい貧血状態の頭では十分に理解することも不可能であった。しかしこちらのそうした状況などかまわず確実に時間は進む。家に連絡が入れられ入院の手続きがとられあわただしくいくつかの検査が行われた。そして相変わらずの貧血状態を感じながら車椅子を押され入院する5階の内科病棟へと向かった。

(続く)

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コメント

自分の告知されたときを思い出しました。
やっぱり絶望的になりますよね~。
続きを待ってまーす。

投稿 crohntrooper | 2005年9月22日 (木) 18時46分

crohntrooperさん、コメントありがとうございます。

僕の場合告知のときは状況が状況だったんで正直よく分かってなかったですね。
後々厄介な病気だと認識したと言うのが正直なところです。

まあ一応あと1回の予定なんでよろしくお付き合いください。
お願いします。m(_)m


投稿 shin | 2005年9月22日 (木) 18時57分

私もこの病気がわかった時のことを思い出しました。
大腸内視鏡しながら、先生が
「うーん。これは厄介な病気かも」って。
同じような言われ方ですね(笑)
私も「死ぬんですか?」って取り乱して聞いたような記憶が。
そして、大学病院に転院して検査入院を
するように言われたんですが、本当に
絶望って感じでした。
「入院」ってのが。今までしたことないし、小さい子供がいるっていうのに。
私も続きを待っております(笑)

投稿 Reny | 2005年9月22日 (木) 20時41分

Renyさん。
コメントありがとうございます。

本当に同じような言われ方ですね(笑)
確かに厄介な病気ですからね。
僕が言われたときは本当にボーっとしてたんであんまり実感無かったんですけどね。

続きあまり期待される辛いんですが(笑)
まあ一応あと1回(ひょっとしたら2回になるかもしれませんが)のつもりなんでお付き合いください。
お願いしますm(_)m

投稿 shin | 2005年9月22日 (木) 21時14分

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